1:上半身のプライオメトリクストレーニングの目的
プライオメトリクストレーニングの目的は、
伸張反射と筋収縮速度(→伸張反射と筋収縮速度とは)
の向上です。上半身でそれらが必要な場面とは、主に
- 投球動作や投擲動作
- 相手を押す動作
- パンチ、突き
などがあります。使われる筋肉は大胸筋、肩の三角筋上腕三頭筋、前腕の伸筋群などです。
陸上のハンマー投げや、アメリカンフットボール・相撲など押す動作がある競技、打撃系格闘技はもちろん、さらに槍投げ、野球のピッチング、バレーボールのスパイク、サッカーのスローインなど上半身を大きく反らしてからの反動動作などは腹直筋をはじめとする体前面の筋肉の伸張反射と筋収縮速度の向上トレーニングとして効果的です。
ではまず上半身のプライオメトリクスならこれ、プッシュアップジャンプからやってみよう。
2:プッシュアップジャンプ
ジャンピング腕立て伏せ。あるいはプッシュアップジャンプ。ただ強度の大きい腕立て伏せとしてやったことがあるかも。ただの根性筋トレになりがちですが、プライオメトリクストレーニングとして行えばがぜんトレーニング効果がちがってくるぞ!
爆発力、SSC、反発力の3つのトレーニングパターン別に解説!
爆発力
バーベルスナッチ(爆発力1)や立ち幅跳び・スクワットジャンプと同様の静止状態からの筋収縮速度向上をめざしたプライオメトリクストレーニングです(→筋収縮速度とは)。
腕立て伏せの正確なフォーム(→腕立て伏せの基本)から、合図に反応して大胸筋から腕まで瞬間的に筋肉を収縮させ爆発的にジャンプ!合図は音でもいいし視覚反応でもよい。競技に合わせて合図も工夫しよう。
→合図と瞬間的判断能力の向上とコーディネーショントレーニング
SSC連続プッシュアップジャンプ
伸張反射を極限までひきだすプライオメトリクストレーニング。ジャンプトレーニングと同様に
手の接地時間を極限まで短くしてSSCを向上
するのがねらい(→SSCとは)。手の接地時間を短くするという事は下のようなジャンプをめざすということです。
肘が深く曲がる前にブレーキをかけて急速ジャンプしてますね。つまり
上半身が深く下りきる前に速い筋収縮速度でブレーキ&伸張反射を効かしてジャンプ!
チャレンジしてみよう!
※手幅のせまいナロープッシュアップでもやってみよう。
反発力-デプス・プシュアップジャンプ
負荷に対して高速反発するパワーの強化
がねらい。
ジャンプトレーニングでもやった高強度のプライオメトリクスメニューの一つでデプスジャンプ(ボックスジャンプ)。の、プッシュアップ版です。上のようなこんな高さからやる必要はありません、ていうか無理です。ほんの5センチからでもかなりの強度だと思い知ります。ポイントはやはり
肘の曲げ角をできるだけ浅く&接地時間を極限まで短く!
その他注意点
足の着地方法同様、ジャンプして手が
フラットに着地します。指先から着地しないように。
→着地の基本技術
爆発力ジャンプ、連続ジャンプ、どちらの場合にも言える事ですが、プッシュアップジャンプはジャンプして両手をたたくやり方もやったことがある人もいるかと思いますが、大事なのは「高く跳ぶ」ことであって両手をすばやくたたくことではありません。
▼こちらも!
次はメディシンボールを使った球技に直結する動きでのプライオメトリクスメニューをやってみよう。
3:メディシンボール
メディシンボールとは
メディシンボールとは、その名のとおり「重いボール」です。重さは1キログラム前後から5キロ以上まで各種あるので自分の筋力レベルや体重に応じて適切な重さを選ぶ必要があります。高重量よりも飛ばすスピードと飛距離を追求しよう。
プライオメトリクストレーニングとは筋力トレーニングではなく筋収縮速度の短縮が目的
なのですから。ではやってみよう!
チェストプッシュトス
バスケットボールのパスのような動作です。これもプッシュアップジャンプ同様、
- 合図に反応して爆発力
- 二人組で連続キャッチ&トス
の二つのトレーニングのやり方があります。連続キャッチ&トスは、二人でトス&キャッチをし合うわけですが、プッシュアップジャンプで接地時間を「極限まで短く」するのと同じ理論で、相手からのトスをキャッチした時できるだけ肘を曲げずに跳ばし返します。
つまり
ボールが手に触れている時間を極限まで短く
してください。ただしボールをたたかないように。あくまで
しっかりキャッチしてブレーキをかけて反転
です。
※キャッチの時、指をしっかり開くように。突き指などの怪我に注意してください。
慣性力と体幹
先ほどのナロープッシュアップジャンプを立って行う形だが、プッシュアップとの違いは「トスの瞬間逆方向の慣性力がかかる」点である。つまり
後ろ方向へのけぞる力が働く。
試しに右のように立った状態で両手を同時に強く突き出してみよう。手だけを突き出すだけでも後ろへのけぞりはしないだろうか。いくら筋力に自信があってもボールの重さが自体重に対して重くなるほど後方への慣性力が強くなる。
慣性力に負けないためには前傾姿勢でしっかりかまえると同時に
腹筋を中心に前側の体幹筋のプライオメトリクストレーニング
として意識しよう。壁に背をもたれてトスしてもよい。
→空手の突きと引き手の謎
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では次はその腹筋と体幹のプライオメトリクストレーニングメニューだ!
4:体幹のプライオメトリクストレーニング
Vシット、V字腹筋
腹筋トレーニングでやはりやった事ある気がする?V字腹筋、あるいはVシットなどと呼ばれる腹筋メニューですが、これもただの根性筋トレに終わらせてはならない!合図に反応して爆発力プライオメトリクストレーニングがV字腹筋の良さが最も引き出せると思います。腹筋が中心になるのはもちろんですが、
大胸筋、三角筋、腹直筋、大腰筋、大腿直筋など体の前側の全筋肉を瞬間的爆発的に収縮させる
のがポイント。
ツイストVシット
名前はワタクシが適当につけました。V字腹筋をツイストさせてやるだけです。
→動的体幹トレーニングメニュー
体幹のねじりが加わるので
腹直筋に加え斜めの腹斜筋
もより使います。
通常のVシット、ツイスト、どちらにも言えますが、スタートポジションでは股関節をできるだけ伸展させた(伸ばした)状態からスタートする事。完全に伸ばしきらなくてもいいですが、曲げすぎると大腰筋・腸腰筋が働きません。
→大腰筋・腸腰筋の筋トレ
最後に上半身のプライオメトリクストレーニングによくある疑問点について解説。
6:本当にこれでいい?!上半身のプライオメトリクストレーニングに対する疑問
「直接的にトレーニングできてる感」
ジャンプメニューなど下半身のプライオメトリクストレーニングのメニューは目指す動作とトレーニングの動きがほとんど同じなので、「直接的にトレーニングできてる感」があると思います。
しかし上半身のプライオメトリクストレーニングでは、例えばプッシュアップジャンプや腕立て伏せ・ベンチプレスと動きが似ていて直接的なトレーニング感がある動作といえばパンチ動作ぐらいでしょうか。「直接的にトレーニングできてる感」が薄いとどうしても「このトレーニングって意味あんの?」ということになりがちです。
プライオメトリクストレーニングの目的を思い出そう
しかし基本プライオメトリクスのページで解説しているように、プライオメトリクストレーニングの目的は
筋肉の伸張反射と筋収縮速度の向上
です。トレーニングメニューの動きが実際の競技動作と異なっていても、
目的とする筋肉がトレーニングできていれば正しいトレーニング
なのです。逆に
動きが同じでも、目的の筋肉がトレーニングされていなければ、そのトレーニングは間違っている
ということになります。これはプライオメトリクスだけではなく、筋トレ、筋力トレーニングでも同様の事が言えます。
筋トレでもプライオメトリクストレーニングでも、動きだけではなく「どの筋肉を鍛えなければならないか」をしっかりと分析してトレーニングメニューを選ぼう。
結び
さてさて、今度こそプライオメトリクストレーニングはどうだったかな?どのジャンプ、どのトレーニングであっても、筋収縮速度を速くするこそがプライオメトリクストレーニングの最も重要な目的です。
ではプライオメトリクスできたえた伸張反射や筋収縮速度を生かしていよいよスピード・敏捷性のトレーニング方法へ進もう。