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四股突き藤田堅のベンチプレスと肩甲骨

四股突き「藤田のやつ、いったい何言うとったんでしょうね?」部が終わった後、シャワーも浴びずにコソコソと道場を後にした木下に金魚のフンのようにくっついて歩く三回生黒ぶちロイド眼鏡の丸山が木下のしょぼくれつつある背中に向かって話しかけている。もう10分ほど冬の夜のキャンパスを歩き回っている二人だが、空になった缶コーヒーをもてあそぶ丸山の問いかけに木下は全く反応しない。もちろん頭の中はさっきの藤田の"先生"ぶりに完膚無きに支配されており、脳内は藤田の二語で埋め尽くされている。「藤田藤田藤田藤田藤田藤田藤田・・・・・」はっきりとはわからなかったが、藤田の話が自分の話を完全否定しているらしいのはまちがいなかった。肩を突き出すな?しかし肩甲骨や肩を出して突きが伸びるというのは内田秀人など多くのトップ選手や空手雑誌などでも常識となっている。しかし藤田の意外なセンスのイラストと話を聞いた部員たちのあの納得しきった顔はどうだ。なに、あの内田を全日本で倒したばかりだからだ、そりゃ白い物を黒と言っても聞くだろう、しばらくたてばまた木下の話を聞くようになる、みたいな根拠も確信もない不安定な自信になんとかぶらさがっているのが今の木下である。

ベンチプレスそうこうしているうちに例によってトレーニングルームの前にたどりついていた。そして案の定電気がついており中に誰かがいる。そっとのぞくとベンチプレスをやっている角刈りの男。いうまでもない。藤田だ。ゆっくりとバーベルを上げ下げする藤田を見て黒ぶちロイド眼鏡の三回生丸山は全日本チャンピオンのこのトレーニング風景を見て「あんなんやっとったら筋肉ガチガチになってまいますよね先輩」ガチガチなのはおまえの脳みそやろと全力で思った木下だが、同時に藤田のやり方に疑問を憶えたのも認めざるをえない。藤田の肩がまったく動いてない。腹筋が大きくへこんで胴体がベンチに押さえつけられているかのようである。手だけが上下に動いてるだけだ。あんなこじんまりとした動きでどうして全日本を制する突きが打てるようになるのだ?

藤田が出て行った後、やはり例によってトレーニングルーム内に侵入する木下。そしてまだ藤田の体温が残るベンチに仰向けになりバーベルシャフトを握る。ウエイトプレートは装着されたままだ。「やめた方がいいですよ先輩」うるさいこのアホボケっ、と、全力で思いつつ、シャフトを握る手に力をこめる。むむ。ビクともせーへんぞ。何キロあんねんこれわ?!もちろん木下はベンチプレスなど生まれてこのかたやったことはない。なに、たいした事はない。腕立て伏せとかわらんやろ。肩甲骨から肩を押し出すと突きが伸びる、という自分の信じた道。信じた道をただ進むのみ。木下は肩甲骨を開いて肩をすぼめるように全力で両肩を突き出した。木下の両肩から発した聞いた事もない妙な、いや軽快な擬音が丸山の鼓膜も間違いなくふるわせた。自分の時代は終わったのだと木下は率直に思った。バーベルを握ったまま放心状態な木下の姿にたまりかねた丸山は自分の中では精一杯の気遣いの言葉を木下にかけた。「先輩、そういえば今日クリスマスイブっすね」死ねばいいのに、と木下は全力で思った。大沼大学空手道部幹部交代の日まであと一ヶ月を切っていた・・・・・・・・・

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